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今日はアテネオ大学という大学内にあるギャラリーに行く。三階建ての大きな建物で、セクションごとに様々な展示を行っていた。20世紀の著名なフィリピン人作家が所蔵していたコレクション展から、学生のアワード、絵本の歴史など、結構バラバラな内容。3階で大きなスペースをとって、「Pio Abad」という作家の企画展が行われていた。キャリアを見ると、1983年生まれで僕の1つ上の年齢で、フィリピン大学で学んだ後、グラスゴーで修士、イギリスのRCAで博士をとっている。
作品はまさに最近この日誌で話しているようなフィリピンの政治と歴史に関してが、彼自身の来歴と重なる交点で作品化されているようなものだった。故マルコスの肖像画の前で撮った自分の幼少期の写真にはじまり、おそらく国費を私的に使い購入された美術品や調度品の写真、同じように不正な資金で買われたジュエリーを3Dプリントで置き換えたオブジェクト等が展示されていた。言いたいことはわかりすぎるくらいわかるストレートなアプローチ。フィリピンという出自とEUでのキャリア形成、ポストコロニアルの風潮にマッチする西欧から見た東アジア的スタンス、諸々がちょうど良い作家なのだろうと感じた。ただ、実際にこちらに来てみて、こういった表現がやがて弾圧されたり、作家自身にまで危害が及ぶ状況も起こり得るのではないかという不安を感じる。大学はある種の自治のようなものが保証されている場所であり、そういった場所だからこそできる表現があることに改めて気づく。そして、その大学というテリトリーの有効性が露わになってしまうということは、同時にかなり深刻な社会状況になっているのだろうと予測する。
企画展リンク(PIO ABAD: FEAR OF FREEDOM MAKES US SEE GHOSTS LAUNCHES AT THE ATENEO ART GALLERY ON APRIL 19)
https://ateneoartgallery.com/newsroom/pio-abad-fear-of-freedom-makes-us-see-ghosts-launches-at-the-ateneo-art-gallery-on-april-19