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今日はジェロームとリサーチに行く日。朝5時にジェロームの自宅前に集合して、彼の愛犬ブルースとともに散歩に出る。なぜ朝の散歩から始めているかと言うと、今回のマニラのリサーチの目的のひとつが、「ゴミとして捨てられているスニーカーを集めること、捨てられているゴミにどういうものがあるか」ということだからだ。その話を平野さんに事前にしていると、ジェロームが朝に犬の散歩をしているうちに、ゴミを拾って生計を立てている人と仲良くなったから、散歩に付き合ったら彼らに会えるかもしれないとのこと。そのようにゴミを拾って生計を立てている人たちを「スカベンジャー」という呼称でよぶらしい。人によって集めているものが違い、金属類やバッテリーが一番高く買い取ってもらえるらしい。なぜこんなに朝が早いかというと、ゴミが回収されてしまう前に集めなければならないからで、地域によって早朝に集めているスカベンジャーもいれば、夜中に活動しているスカベンジャーもいるようだ。
大型犬のブルースはこのあたりでも珍しいらしく、目を引く。いつも散歩の途中で何人かの近所の人に余ったパンをもらっているみたいで、ジェローム自身もブルースを通じて知り合った人が結構いるらしい。歩いていると、野良猫、野良犬、軍鶏など、改めて動物が多いなと感じる。大きめの段ボールを台車に載せている女性と出会った。彼女は主にペットボトルを集めて、スカベンジャーとして生計を立てているらしい。ジェロームにタガログ語で話を聞いてもらう。もう13年近く、彼女はこうしてボトルを集めて生活をしているらしい。昨年、娘が小学校を卒業したらしく、自分がこうして稼いだお金で式のためのドレスをレンタルできたことを話してくれた。
散歩は続く。朝ごはんを食べるために近くの食堂に行く。「ルガウ」という、お粥のもっとご飯が少なくトロトロになったようなものを頂く。味付けに使っているのはナンプラー、生姜、鶏がらスープ、お酢ぐらいだろうか。具は豚バラを揚げたかたまりが入っている。普通に美味しい。
ブルースとさよならをした後は、ジプニーという乗合タクシーに乗る。ジェロームが乗り方・降り方・料金の払い方などを教えてくれるが難易度が高い。特に一番難しいのが、行き先がわかりづらいところだ。車の前に行き先を書いたプレートがあるのだけど、それを見て「ああ、あっちの方面に行くんだな」と瞬時にわかる訳がない。この日、移動のため何回かジプニーを使ったが、乗るたびに何人もの視線を感じた。
スニーカーのゴミを探しながら、いくつかの教会、中華街、イスラム教のモスクなどを案内してもらう。15時過ぎだったけど、もう既に9時間ぐらい動いているから、ビールを飲みに行くことにする。時間も早かったからか僕たち以外に客はいず、貸し切りのようなレストランでジェロームと美術や互いの国の状況について話す。ジェロームも2度日本に来たことはあるらしく、共通の友人がいる話題で話が盛り上がる。
今回のドクメンタのディレクターに選出されたのは、インドネシアのコレクティブチーム「ルアンルパ」なのだが、マークさんや平野さん、そしてジェロームが活動するlaod na dito(ロード ナ ディト)もルアンルパから参加のオフォーを受けている。予算等の問題もあって、ジェロームはメンバーとして唯一、今週の土曜から実際にドクメンタへ行く。帰ってきたときにまた案内してもらうことをお願いして、早めの帰路につく。